トップインタビュー!大商木材の10年を振り返る、そしてこれから…

1967(昭和42)年、人吉で個人木材店として創業して以来、大商木材はさまざまな変遷を遂げながら、木造建築物のプロフェッショナルとして躍進してきました。

今回は弊社代表多賀博文に、この10年間を振り返りながら、会社としての成長について思うこと、未来への展望などをインタビューしてみました。

住宅部門の経験で、お客様の夢を叶えるためにできることを再確認

―10年間を振り返ってみて、どのような年月でしたか。

10年前と言うと、ちょうど住宅部門を立ち上げたくらいです。本体の木材加工部門は現会長の父が、そして新たに立ち上げた住宅部門を私が統括することになりました。ここでの経験が、私個人の大きな成長につながったと感じています。

特に、これまでと違う視点に立ったことで、お客様の夢を叶えるために自分たちができること(すべきこと)に気付くことができたということは大変大きな学びでした。

木材加工という仕事において、直接のお客様となるのは工務店やハウスメーカーです。このやりとりの中で、その先にいらっしゃる家を建てるお客様の夢を叶えるお手伝いができていたかというと、そこまでには至っていなかったかもしれません。

しかし、住宅部門でお客様の声を直接聞き、そのために最大限できることを考えてきた経験があるからこそ、その土台をつくる木材加工の本業にも生かせていると思っています。

―令和に入ってすぐに社長に就任し、大きな決断もされました。

父から会社を引き継ぎ、これまでの木材加工と住宅部門という2足のわらじを履く経営を見直しました。経営の選択と集中といった方向に舵を切り、住宅部門の新規の営業をストップし、本業の木材加工にシフトするという選択をしました。もちろん、これまでの住宅のお客様にはこれまで同様のサービスを続けています。

また、人材の面から自社では完結できない業務を思い切ってアウトソーシングしたことが、会社としての大きな転機になったかもしれません。

強みに磨きをかけ、弱みを補う経営へ

―その決断で会社にどのような変革が見られましたか。

経営的な部分からいうと、配達や工場内の発注など、これまで何となく感覚的に動いていた部分の全ての数字を拾い出し、自分たちの強みは何か、弱いところはどこかを見極めるための分析を行いました。父の眼鏡と私の眼鏡はもちろん違います。両者の強みにはさらに磨きをかけ、弱みを補完する経営に注力したことで、少しずつ変化がみられるようになりました。社長交代からの5年、このような調整に社員全員で取り組んできました。

また会社内の環境面の見直しも行い、作業効率を高めるため、徹底的に工場内の導線の整理なども進めました。

―これまで働いていた社員にも変化が見られたそうですね。

急激に全てが変わったということではなく、徐々に一人一人の能力が開花してきていると感じます。これまでのトップダウンだった経営から、逆に、自分たちのカラーや能力を発揮していいんだという、解き放たれたような雰囲気が出てきたのかもしれませんね。

これまで気付かなった思いがけない発想力や皆を引っ張っていく統率力、一つの業務に巻き込んでいく吸引力だったり。職種や経歴に関係なく、本当に新たな力を一人一人が発揮してくれています。

これらの能力はもちろん、これまでの経営の中でそのベースが作られたもので、今はそれを発揮できる土壌(場所)が会社にできたという風に捉えています。

任せることで芽生えた新たな力

彼らの成長を見ていて、任せることの必要性も感じています。例えば、これまで採用と言えば必ず代表である社長が面接を行ってきましたが、思い切って一緒に働く現場に任せてみたのです。

すると、これが採用される求職者にとっては、話しやすさだったり、実際の現場のこと、福利厚生のことなども臆することなく聞けるわけです。また採用する側にとっても、こんな人と一緒に働きたい、自分の会社の魅力は、福利厚生はどうなっていたかなど、全てを熟知していないとなりません。これまでとは違う視点で採用に当たることで、情報の整理や自分自身の振り返りもできているのではないかと思います。社員を信じて任せたことが、両者にとっても会社にとってもよりよい作用をもたらし、結果としてとても良い人材とのご縁をいただいています。

また昨年末から、社員が先生となって話をする研修会もスタートしました。社員のこれまで見えなかった才能や個性が発揮でき、さらなる成長につながるのではと期待しています。このように、社員同士がお互いを高め合う機会が増えていくことが、私が望んでいたこと。結果として会社の成長にもつながるのだと思います。

技術面のバージョンアップが業務全体の効率化に奏功

―昨年は大がかりな機械の入替えなどもありましたね。

夏場の約1カ月間をかけて特殊加工ができる新機種「FZR-6」を導入しました。これに伴い、工場内の配置や導線も再度見直し、技術面での大きなバージョンアップにつながったと思います。

技術的なバージョンアップが、業務の効率化と計画的経営(合理化)にも反映され、今ではほとんど残業がなくなりました。もちろん弊社は、オーダーメイドの会社ですので、作り置きということはできません。業務によっては期間的(時季集中)な濃淡はありますが、“ノー残業”は全社員が遂行できているのではないかと思います。

また社員自身も残業ありきの働き方ではなく、一日のタスクをいかに効率よく勤務時間で終わらせることができるかということに注力しますので、むしろ効率を上げて仕事をするというモチベーションを持って取り組んでいるように思います。

しかし今の状態は、まだまだキャパがあるということ。それはまだまだ、弊社には伸びしろがあるということなのだと捉えています。

人が質の高い商品を作り、質の高い商品が会社の価値を作る

―これからどのような会社を目指していきたいですか。

この10年で会社が大きく変わってきたのは、一つは“視点の変化”がもたらした好循環だと思います。思い切って見る方向を変えたことで、これまで見えていなかった大切なことに気付くことができたことは大きな収穫だと思います。

視点の変化には、見る方向だけでなく、本質を見ぬく力も含まれています。これから私たちが目指すの、安さではなく質。「大商木材さんいいね!」の裏にある、「いいね!」の本質が、安さ基準ではなく、質と信頼性はもちろん、作るものへのこだわり、そして他社にはできない提案だったりするのだと思います。そのようなものを総じて「大商木材さんいいね!」となっていってほしいのです。

決して闇雲に会社の規模を大きくしたいのではなく、今よりやれることを増やし、皆でおもしろいことにチャレンジできる会社に育てていきたいと思っています。

そして、これらすべてに通じるのが「人」だと思うのです。「人」あってこその会社。「人」あってこその大商木材の未来なのです。人が育てば、それに見合う商品が作れ、その商品に見合う価値が生まれます。

私たちは今、そのためにできること。まずは、できて当たり前と思っていた足元を見直すことから真摯に取り組んでいきたいと思っています。