「自分の仕事?」「他人の仕事?」意識を変えることで見えてくるものとは

2024年4月、新年度がスタートしました。

街中で真新しいスーツに身を包んだ人や先輩らしき人に付いている初々しい姿を見かけると、こちらも入社当時を思い出し、何だか背筋がピンと伸びる思いがします。

高校や大学、専門学校を卒業し、初めて社会に出て働く人、転職して新たなスタートを切った人、新しい部署で新たな業務に携わる人…。それぞれ、ワクワクした気持ちと少し不安な気持ちが交錯しているのではないでしょうか。

初めての仕事、慣れ親しんだ仕事、得意な仕事、不得意な仕事など、いろいろな「仕事」があると思いますが、今回は「仕事」の捉え方について、弊社で大切にしていることをご紹介したいと思います。

複数ポジションを兼任できる人材がなぜ求められるか

「仕事」とは何か? 皆さん、考えたことはありますか?

ある辞書には「職業や業務として、すること」とあり、別の辞書には「何かを作り出す。または、成し遂げるための行動」―とありました。 今回ご紹介する「仕事」の捉え方は、後者の「何かを作り出す。または成し遂げるための行動」ということを念頭に置いて読んでいただくとよいかもしれません。

「自分の仕事」をどう捉えるか

私たち木材加工の仕事は、木造の住宅や店舗など、木を使った建物の土台を作る仕事です。

多くの人が関わり合い、材料となる「木材」を調達、設計し、様々な加工を施し、届けるまでの一連の作業を担っています。

自ずと、お客様の下に商品を届けるまでには、様々な部署の人が自分の役割を認識し、それぞれの持ち場で力を発揮してくれています。

現場で機械を操作して木材の加工する人もいれば、手作業で細かい木材加工の調整をする人、加工された木材を現場に運ぶ人もいます。弊社の商品を知っていただくために様々な営業をしている人もいれば、CADを使って設計をしている人、職員の働きやすい職場環境を整えるため福利厚生の手続きをしてくれている人もいます。

会社組織に入ると、どこの会社にも配属というものがあると思います。職種採用の場合も、どの技術や知識が必要とされているのかは明らかです。

弊社の場合、「CADオペレーター」や「工場内機械オペレーター」「配送運転手」などの職種があります。もちろん、それぞれの持ち場で最大限に個人のスキルを発揮してもらうということが一番大切なことです。その日になすべきことを完了させることが、業務遂行上は求められます。

しかし、私たちの仕事は、機械で計ったように毎日スケジュール通りに進むかと言えば、そうではありません。「今日は、少し早く仕事が片付いた」「どうしてもここまでやっておきたい」といったこともあるのです。

そんな時、「自分の仕事はココまで」と境界線を決めている人ばかりだったとしたら、どうでしょう。いろいろな人が関わり合い、お互いに支え、支えられることでうまく運んでいた部分が、すっぽり抜け落ちてしまう気がするのです。

弊社の社長は常日頃、「自分の仕事だけをやればいいという視点ではなく、『自分の仕事が終われば、何か手伝えることがないか』と周りを見渡せる人材になってほしい」と言っています。

ここには、「自分の仕事」を会社という組織を軸にして考えて欲しいというメッセージが込められているような気がしています。

他職種への興味・関心が個人、会社の成長に

弊社で働く社員の仕事ぶりを見ていると、自分がその日にやるべきことと、それにかかる時間配分などを見越して、行動しているのがよく分かります。

会社に求められている役割だけでなく、先輩たちは今何をしているのか、自分たちが手掛けた仕事が、次の段階でどのように扱われているのかに興味深々な様子が見えてきます。

実際、若手社員の中には、大型自動車の免許を取る他、自ら今後必要になるかもしれない資格取得にチャレンジするなど、他の仕事に挑戦してみたいという前向きな声が出始めています。

先輩たちが率先して動いている姿を見て、「やらなければならない」という義務感ではなく、「やってみたい」「知りたい」という自発的な向上心が社員の中に芽生えているのを感じます。

先輩や他の社員の仕事に関心を持つという、大商木材の風土が築かれつつあり、これが会社理解、引いては会社全体の成長につながっていると思います。

大商木材での他職種兼任例

では実際、弊社の業務の中でどのような業務を兼任しているスタッフがいるのか見てみましょう。

<CAD+事務> 

工務店やハウスメーカーからいただいた建物の図面を基に、CADでプレカット用の設計を行います。実際、CADを使った作業に一日中かかることはなく、時にはお客様対応をしたり、備品の発注をしたりするなど、会社全体を見渡す役割も担ってくれています。

<オペレーター+配送>

CADで製作された設計図に沿って、木材を加工するのがオペレーターの仕事です。大型の機械導入以降は、ほぼ全て自動製材となっているため時間的拘束も短くなっています。自分たちが製材した木材を現地に運び、どのように使われているのかを知ることで、自分たちの仕事の意義を再確認する機会にもなっています。

<大工+配送>  

木材加工が機械導入により自動化されてはいますが、どうしても人の手が必要な細かい部分には、大工の技術が必要不可欠です。大工は、木材加工の技術はもちろんのこと、現場の建て方においての知識も有します。木材を運ぶだけでなく、現場でこれまでの見識を活かせる場面が多くあります。

2024年4月から新たなルールづくりをスタート

このように、弊社では職種ごとの分業制ではありますが、社員がさまざまな現場に関わりながら営業から製材、納品までの一貫した業務を遂行しています。

ここには、しっかりとした業務の把握と一人ひとりの頑張りに応じた評価が必要だと考えています。

年功序列制から人事評価制度導入へ

これまでの年功序列制には、以前から代表は疑問を感じていました。

その人の働きや能力を見るのではなく、働いている年月で給与が決められていることが、働く意欲やその人の成長の機会を削ぐ原因になりかねないと考えています。

これまでも、「自分の仕事」における技術力と達成度、「他人の仕事」への理解度、協力度など、すべてを見通して一人ひとりの業務を見定めてきました。

しかしこれは、あくまで管理職側の目から見た評価に過ぎません。

そこで2024年度は、より明確に社員の適正評価につなげるため、新たに人事評価制度の導入に向け準備を進めているところです。

一人ひとりの職能を明確に評価

弊社のように、少数精鋭の会社においては、「自分の仕事は、この仕事だけ」という仕事の進め方ではなりたたない現状もあります。また、自分に与えられた役割だけでなく、周りを見渡せる気持ちを持って働けるマインドをとても大切にしています。

今後は、勤めている年数に応じた給与算定ではなく、その人の能力や頑張りをしっかり見定めて、適正な評価をし、給与に反映させていく必要性を感じています。

制度として確立するにはもう少し時間を要しますが、準備が整い次第、社員にも評価制度を開示し、透明性のある人事評価を進めていきたいと考えています。

会社全体の流れを変える転機となった取り組み

弊社が、このように古くからの慣習を変えていくきっかけとなったいくつかの取り組みがあります。「昼礼」と「MM」という全社員が参加する取り組みについて、ご紹介してみたいと思います。

「昼礼」の導入と新たな仕組みづくり

「昼礼」は、令和1年に現社長に交代したタイミングで、それまでの「朝礼」に代わり導入したものです。

出勤確認程度の簡単なものから、大手ゼネコンで働いていた代表の経験を活かして、取り入れたのですが、部内全体で翌日までのスケジュールが把握できることで、各段に業務効率が上がっています。

現場でも、「今日は何をする?」という指示待ちではなく、計画性を持って仕事に取り組めることで、会社全体のモチベーションが向上し、楽しく、質のよい仕事につながっています。

また現在、スタートした頃とやり方を少し変えています。最初の15分ほどを、各部ごとのディスカッションの時間に充て、部内でまとまったことを、管理職ではない部員が皆に発表する形式を取り入れています。

この昼礼方法を取り入れたことで、話し合いにも能動的に参加し、しっかり現状や作業について把握しておかなければ、発表者となった場合、的確な説明ができません。

また、部内の一人ひとりの動きも必然的に頭に入ってきます。これが、部内の作業効率のアップ、各部署の士気向上にもつながっています。

「昼礼」について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

「MM」による共通認識、知識の構築によるマインドの変化

また、2022年9月に特殊加工ができる機種「FZR-6」を導入した際、工場内のレイアウトを全社員にヒアリングし環境整備を行ったことをきっかけに、その後も全員で意見を出し合う「MM(みんなでミーティング)を定期的に行うようになりました。

仕事そのものを掘り下げて話したり、これまでの慣習を見直すきっかけとなる率直な意見を出し合ったり、一人ひとりがより働きやすい、働き甲斐のある会社にしていこうという向上心が芽生えつつあります。

指示待ちでなく、自分ごととして会社のこれからを考えてくれている社員の姿に、頼もしささえ感じています。

大商木材で取り組んでいる「MM」について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

経営者、管理職の意識変革が重要

会社を支えてくれる社員を見ていると、本当に一昔前の「でなければならい」といった凝り固まった考え方だけでは、これからの時代の雇用継続、そして会社の成長は望めないと思っています。

もちろん、よき風土や慣習を継承することは大切です。よき流れは継承しつつ、そこにどのような新しい風を吹き込んでいくかが重要なのだと感じています。

時代の流れ、目に見える社員の成長、その変化に追いついていかなければならないのは、実は経営陣の方かもしれないと気持ちを新たにしているところです。

今後も、社員一人ひとりが、自分の声として想いを伝えられる「昼礼」や「MM」の場を活用しながら、前進していきたいと思います。

ボトムアップしやすい環境への変革

ディスカッションができる組織に

個人が主体的に発言したり、行動したりできるようになることが、会社の成長につながっていることは明らかです。そこには、先輩後輩の垣根を超えた信頼関係が生まれ、一つの仕事を成し遂げるチームとしての関わり合いが生まれています。

今以上チームとして成果を上げていくためには、常にディスカッションを重ねられる組織でなくてはなりません。

弊社は、若手の社員も代表と話す機会が毎日あります。その場を大いに活用しながら、誰もが意見やアイデアを出し合える組織になっていけるよう、環境づくりにもさらに力を注いでいきます。

「変化」を恐れず、「変化」の先を創造できる組織に

様々な変化を取り入れながら、少しずつ会社としての在り方も変わりつつある今。各部署の一人ひとりが大きく成長してくれていることは、会社として大きな喜びであり、何物にも代えがたい財産であると思っています。

やりがいや向上心を持って働き続けられる環境を、会社に「整えてもらう」という意識ではなく、「自分たちで作っていく」という気概が多くの社員に感じられます。その想いの共有ができているからこそ、同じ目標に向かい、残業せずとも業績を上げていける組織に育っているのだと思います。

変化することを恐れず、変化の先をどう創造していけるかが弊社の未来につながっていると信じ、さらなる歩みを進めていきます。