木材業界を知る~明るい未来に向けて必要なものとは~

2020年のコロナ禍以降、さまざまな業界でその余波が報じられてきましたが、今年に入り各業界に少しずつ明るい兆しが見え始めてきました。では建築資材となる木材業界は? 弊社社長に現状と課題、これからの展望を聞いてみました。

SDGs&ESDの視点から見る木材業界は?

「家を建てる」―。以前なら、洋室のリビングからつながった和室があって…という風景を思い描く人が多かったと思いますが、いわゆる一戸建て住宅の購入を考え始める20代~30代世代が、もはや和室で暮らした経験がないという時代に突入してきました。

伝統的な和風建築が減少しつつある今、多くの住宅から和室がなくなるということは、数十年前には想像もつかなかったことです。

和室がないということは、いわゆる和室の命とも言える梁や大黒柱が表面で存在感を醸す家の造りとは異なるわけです。無論、建築に必要な木材は少なくなります。

建築に必要な木材は、構造材と言われる表には出ない部分が中心になりつつあります。

また近年のミニマリスト志向。所有物を最小限度に留めたいということから、家に対するこだわりがなく、そもそも家を所有しないという選択をする人が増えつつある現状も、木材業界にとっては気になるところです。

脱炭素社会へ向け、見直される“木材”

とは言え、木材業界にも明るいニュースが聞こえてきます。

近年の「SDGs」(持続可能な開発目標)や「ESD」(持続可能な開発のための教育)の推進において、社会全体がこの達成へ向けた取り組みを加速しています。

2020年10月、日本政府が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したのもその一つです。

温室効果ガスを全体としてゼロにするというのは、排出量から吸収量と除去量を差し引いてゼロにすることを指すのだそうです。

木の循環がもたらす社会的意義

そこで「吸収量」の視点で注目されているのが木材。自然界にある木は光合成をする際に、二酸化炭素を吸収しながら育ち、内部に炭素を貯蔵します。

このような点から見ても木の循環がもたらす社会的意義は大きく、改めて木材が見直される契機となりつつあります。

そこで「吸収量」の視点で注目されているのが木材。自然界にある木は光合成をする際に、二酸化炭素を吸収しながら育ち、内部に炭素を貯蔵します。

このような点から見ても木の循環がもたらす社会的意義は大きく、改めて木材が見直される契機となりつつあります。

商品需要の変遷とそれによって生まれたメリット

先にも述べたように、建築様式の変遷に合わせて、必要な木材需要も変化しています。

例えば、以前までは天井や壁に加工した木材を張り巡らせていた住宅も、今は木材風のクロスなどが多く出回るようになりました。住宅資材で言えば、構造材への需要が中心と言ってもよいでしょう。

その一方で、これまでは鉄筋コンクリートや軽量鉄骨で建てられていたコインランドリー、飲食店など、コンビニ程度の小規模な建物の木材需要が伸びています。

これまでは、大断面の処理ができる大型工場でしか扱えない製品でしたが、機械化による長物加工技術の進展で、小規模の建造であれば、弊社でも生産が可能となりました。

※大商木材の長物加工への対応技術はこちらからもご覧いただけます。

耐震基準強化が転じて、素材管理のコストダウンへ

また近年は、大規模地震に備えた耐震設計がより厳しく義務化され、図面づくりにおいても同様の厳しさが反映されています。

以前までなら、図面に示された同等の素材であれば代替使用ができていたのですが、近年は図面に表記されている材料しか使えないのです。

またコロナ禍のウッドショックでは、木材価格の高騰や木材の調達ができない木材不足も手伝って、そもそも業界全体が図面にある材料をそろえることが難しくなる現状が見えてきました。

これらの状況は、一見私たちの業界の難しさが露呈したように見えるかもしれませんが、使う素材(使用頻度の高い素材)が絞られる。そして設計段階での構造計算が簡略化されることに加え、在庫管理の面でもコストダウンにつながるー。

弊社では、現状をメリットと捉え、その中でどうすべきかに注力してきました。

木材業界における女性の活躍

次に人材登用の面についてです。

木材業界というと、どうしても“男社会”のイメージが先行しがちです。体力のある男性が活躍する現場を想像して、女性は職業としての選択肢から外してしまう人も多いと思います。

しかし、どこの業界もそうですが、一つの会社の中にはさまざまな職種があり、女性が活躍できる場面は多岐にわたります。むしろ、女性で現場に向いているという人もいるかもしれません。

女性だから、男性だからではなく、その人の適正を見極めて配属するということは、どこの業界にも言えることで、その障壁(固定概念)を打ち破ってこそ思いもよらぬ芽が見えたり、業界そのもののイメージを転換するきっかけになるかもしれません。

結婚、出産後も続けられる会社づくり

弊社でも、新卒で入社し、結婚、出産、育児休業を経て会社の右腕となって働いている女性社員がいます。

現在、全社員の約3割が女性社員で、総務経理、CAD、生産管理など、幅広い分野で、それぞれの能力を発揮しています。

「一人一人の能力と特性を生かせる現場。その人がいきいきと能力を発揮し、成長できる現場をつくっていきたい」というのが代表の思いでもあります。

求められる教育の重要性

木材業界を含む建設業界全体として、長きにわたり抱えているのが人手不足の問題です。この現状を補ってきたのが機械化や海外研修生の活用です。

機械化による作業効率化

これまで大工による手作業で行っていた部分をオートメーション化することで、人手不足の補填と作業の効率化が望めることから、業界全体が機械化への流れにあります。

これは今後も進むでしょうし、今後はその機械を操作できるオペレーターや、データ化するCADの技術者の活躍の場はさらに広がりを見せると思います。

一方、慢性的な人手不足の解消策としては、長年、日本国内での研修を希望する海外研修生を多用する業者が多くありました。

しかしコロナ禍以降、円安も追い打ちをかけ、日本での研修を希望する研修生が激減。多くの業者が、再び人材確保に奔走する日々に舞い戻っています。

この現状を受け、浮き彫りになってきたのが国内人材に向けた教育の希薄さでした。労働力を海外の人材に頼り過ぎていたひずみが、今顕著に現れ始め、国内人材の教育を急ぎ立て直しているというところも多い現状です。

経験がなくても成長できる風土を育てる

これからの業界を支えるのも、転換させていくのも要となるのは人材です。

AIやロボットによる技術革新、DXの潮流の中にあって、それを操作、オペレーションするのは人であることには変わりません。

女性、男性ということも、これまでどのような仕事をしてきたかなどの経験も必要ありません。

大切なのは、その人の“これから”なのですから。

今も隣で、今年4月に入社したばかりの新入社員が右往左往しながらも、先輩に付き日々成長を見せてくれています。

ここに目を向けて、心を寄せて、全社員が共に成長していく風土を育てていくことが、会社の発展にもつながり、業界全体を盛り立てていくのだと思います。

※なお、次回は新卒で入社後、結婚、出産、育休を経て、キャリアを積んでいる女性社員の声をお伝えします。お楽しみに!